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憲法における国民の義務【結論】現行憲法では「勤労の義務」、「保護する子女への教育義務」、「納税義務」を謳っていますが、これらは直接国民へ義務を課したものではなく、国家存続の立場から権力者に対してこの分野での権力行使(立法等によって国民へ義務を課すこと)を認めることを予告する規定にすぎません。 改憲を志す人の多くの議論に「現行憲法には権利ばかりが多くて義務や人権制限条項が少ない」というものがあります。 自民党の山崎さんという人は、その結果「戦後教育において、権利の主張は強調され、義務や責任を学ぶことが少なくなりました。他の人が持っている権利に配慮することよりも、自分の権利を主張することが優先され、利己主義に走り過ぎているのではないか、そのような反省の声は決して小さくありません。」と述べています。 たしかに表面的には憲法で規定された人権条項は30を超えるほどあるのに、人権の限界を規定した条項は4つ、義務規定は、ご存知の通り勤労、保護する子女への教育、納税の3つしかないように見えます。 しかし、このような見方は、あまりにも表面的であり、あえて意図的に法学的視点を避けた見解であると言えます。なぜならば、実は人権の総則規定である憲法12条(権利の濫用禁止条項)、13条(公共の福祉による権利の調整)は、あまた明文化されている個別人権規定全てにかかわる権利の制限規定でもあるからです。 つまり、人権条項の規定の数だけ、その人権の限界も規定されているのであって、『権利の主張は強調され、義務や責任を学ぶことが少なくなりました』と言うお話は、意図的に12条、13条を欠落させた議論であると考えられるからです。 さて本題に入りましょう。 憲法における国民の義務の話ですが、これを正確に語るには、まずは憲法って何だ?というところから話を始めないと、なかなか国民の義務規定を設定している意図が見えてこないように思います。 通常の法令(実定法)であれば、その中の義務規定の存在は権利と義務の議論から説明することは可能ですが、この議論をそのまま憲法に当てはめて、憲法における国民の義務を論ずる事は正しい事ではありません。(これをやってしまうと憲法は義務規定であると誤解を受ける可能性が大きい) 現行憲法では「勤労の義務」、「保護する子女への教育義務」、「納税義務」を謳っていますが、これらは直接国民へ義務を課したものではなく、国家存続の立場から権力者に対してこの分野での権力行使(立法等によって国民へ義務を課すこと)を認めることを予告する規定にすぎません。憲法とは権力の濫用を防ぐために国家に対する義務(権力行使の制限)を定めたものであって、国民に対する直接の義務を定めたものではないからです。 改憲をしようとしている人たちは、この部分を捻じ曲げて、憲法そのものを法律と同様に「国民が守るべき法規範」にしようとしています。 ◆自民党の見解では「憲法とは「国家権力を制限するために国民が突きつけた規範である」ということのみを強調する論調が目立っていたように思われるが、今後、憲法改正を進めるに当たっては、憲法とは、そのような権力制限規範にとどまるものではなく、「国民の利益ひいては国益を守り、増進させるために公私の役割分担を定め、国家と国民とが協力し合いながら共生社会をつくることを定めたルール」としての側面を持つものであることをアピールしていくことが重要である。」としています。http://www.janjan.jp/government/0406/0406266100/2.php さて、上記引用の通り、このような議論の前提に立ち、たとえば「義務が少ない」と言っている人たちの中には「国を愛する義務」だのを憲法にも入れよという人もいます。 たしかに国を愛する心を持つことは大切な事です。 しかし上記で見たように、憲法における国民の義務とは国家存続の立場から権力者に認められるものであって「愛」などという個人個人の内面的な部分を法律で規定する事を許してしまうと、内面的な部分は誰にも計測できないために、結局外面的な現象で「愛国者か非愛国者か」を判断せざるを得なくなります。 そんな際の立法のポイントはおそらく「日の丸掲揚の際に起立せよ。君が代を斉唱せよ」と言った形になるのでしょうか?そうすると「国は愛するが、国を愛する法律に縛られるのは拒否する」という人は法律違反であり、内面はともかく、外面的にその法律に従わない者なので「非愛国者」扱いされてしまいます。 国民の個人の内面的な価値観は多様ですから、このような個人の内面に立ち入り、それを強制するような立法を許せば、結局は国家存立の基礎である国民の分断を招く事になりかねません。これでは本末転倒でしょう。 このような倒錯を避けるためにも、憲法憲法における国民の義務規定を考える場合には周到な議論が必要であると考えます。その大前提は「憲法とは何か?」の本質を踏まえるという事です。 ←前のページにもどる |
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